K-G.2 PV とほとんど同時に届いたキネティックノベルの完結篇です。話の大枠は想像がついていましたが第2次 嘆きの異邦人動乱といったところです。もっとも、作中でも説明されていますが事象を改変する奏世楽器が使用されたために出来事に関わったフォロンたちの記憶には残っていても周りの記憶にはあまり残っていないということになっていますね。まあ、あまりきちんと記憶に残っていると完全に英雄になってしまいますから小説版の進行に支障が出るでしょうね。
ただ、今回の話に関してはいろいろ例外を作った分設定考証では課題が残るでしょうね。最大のネックは下級精霊であるにもかかわらず人型のフマヌビックであるミゼルドリットでしょう。一応、小説版を読む限りの設定では下級精霊は自我の持ち方が曖昧ということになっていて、それゆえにほとんどがボウライのような人間やその他の動物とはかけ離れた形態になっているということになっています。
無理やり取っ掛かりをつけるなら、下級・中級・上級の別が完全に離散的であるかどうかは合理的な疑いが残るので、そこに付け込む隙があるかもしれませんね。つまり、下級精霊を 1.0、中級を 2.0、上級を 3.0 とするなら 1.5 や 1.7 といったグレードの精霊が存在しないことは証明されていないというところですかね。
話としては完全に非日常ですね。まあ、もちろん戦乱が日常になっている世界も構築できないわけではありませんけど。それでも、治安状態が比較的良好とみられるこの世界では戦争は非日常でしょうね。話そのものは一応、うまくまとまっているように見えますね。ただ、まあ、再奏世という事件を取り扱っていますから、少々オリジナリティは欠く嫌いがあります。それぞれのドラマはうまく進行していますが今やるのならもう少し一ひねりが欲しかったですね。
最後で一種のアンサンブルになっているのはこの世界らしいですが。ただ、サンテラ・ボルゾンがなぜ世界を否定して新世界を構築しようとしたのかその部分は掘り下げが必要だったように思います。一応、天才ゆえの孤独が一つの原因だったようですが、ではクチバ・カオルの場合はどうだったのか。もっとも、クチバ・カオルの件は小説の方に持越しとも取れますね。なぜ、コーティカルテはフォロンを選んだのかその根幹に関わってきますから。
作中では、サンテラ・ボルゾンは天才であるがゆえに孤独であるという所は言及されています。しかし、それと世界を否定するというところは一足飛びに繋がらないのではないかと思います。クチバ・カオルの記録は見たようですが、そこで何を見たのかが欠落しているためサンテラ・ボルゾンが再奏世という所についた根幹の理由が見えないのです。これが、ARMS のキース・ホワイトだとアドルフ・ヒトラーなどの優生学的な観点を加味した選民思想辺りが現世界の否定に繋がっていることが判ります。また、エグリゴリという組織そのものが人類の進化に邁進して言った経緯なども傍証になります。
このように本作では敵役になるサンテラ・ボルゾンの行動原理の説明がやや弱いのが残念です。ここが弱いと対立者である主役のフォロンもやや鮮明さを欠いてしまいます。例えば、天才であるがゆえに人に理解されないとかそういった過去が描写されていれば良いと思ったのですが。あるいはやってみたかったからという求道者としての立場からならその立場からの表現が必要であったかと思います。そういう意味では、面白い出来ではあるのですが食い足りないというところです。
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