見ていない作品を本来、論評するのは適切ではないのだが。ニューズとして取り上げる価値はあるだろうと思う。かのこんというライトノベルのアニメ化作品があるようだ。原作も未見であるので正確なところは存じてはいないのだが、どうやら風評を見る限りでは性描写が一つの売りになっているらしい。結果的に、GyaO などの倫理規定を逸脱してしまい、配信が6話で打ち切られることになったようだ。打ち切りはGyaO に留まらずバンダイチャンネルのインフラで配信していた、@Nifty や BIGLOBE など他のメガプロバイダにも及んでいる。
昨年来、この種の放映・配信におけるトラブルが続いている。知られている範囲では School Days、ひぐらしの鳴く頃に解が知られている。どちらも残虐描写が問題となったケースではある。しかし、性描写・残虐描写ともに規制の影響を受けやすいセンシティブな表現ではある。その意味では動向を測るカナリヤのような意味合いもあると言っていい。
今回の場合は、時期としてもいささか微妙な時期に起きている。いわゆる、インターネットにおけるフィルタリング問題というプロバイダにとっても死活的な問題がある時期である。特に所謂、高市法案という憲法的にみてもかなり危険な法案を押し出す議員がいる時期である。プロバイダ側としても彼女を跳梁させる危険もあると判断したのかもしれない。規制に前向きな自民党でさえ、高市法案の受けは良くない。実際、総務省の検討案は高市法案ほど戦闘的なものではない。もっとも、これでももたらす萎縮効果などは問題のあるものだと認識しているが。
そういう時期である、プロバイダがいわば組織防衛に走るのを止めにくい条件がそろっている。そういう意味では、恰好のスケープゴートになった懸念はぬぐえない。ただ、残虐描写・性描写だけがクローズアップされてしまうような作品を作ってしまうところにも一抹の不安が残る。DVD 等の販売が頭打ちになりつつある以上、刺激的な描写で人目を引こうというのは営業上、避けられないのかもしれない。しかし、結局、それだけがクローズアップされるのは規制をしたいと考えている輩に格好の口実を与えてしまい、結局は自分の首を絞めることになりはしないかとも思う。
高市法案がいまだに死んでいないらしい件に関しては、崎山伸夫のBlog のエントリー "高市法案がいまだ死んでいないらしい件" が詳しい。こういった、表現規制の強化に突き進みがちな議員は自民党以外に民主党にも存在し円より子議員のように「少女アダルトアニメ雑誌とゲームの製造・販売の規制法制定に関する請願」などで具体的な行動に出ている人物もいる。もっとも、彼女の請願は科学的な根拠を全く欠いており容認しがたい。というか、戦後一貫して青少年の殺人・強姦事件の件数が減少していることを事実として認めながら、
街中に氾濫している美少女アダルトアニメ雑誌やゲームは、小学生の少女をイメージしているものが多く、このようなゲームに誘われた青少年の多くは知らず知らずのうちに心を破壊され、人間性を失っており、既に幼い少女が連れ去られ殺害される事件が起きている。と、結論するのは論理的に矛盾する。
名も無き市民の会 BLOG のエントリ "とんでもない請願があらわれた!" によれば、この請願は主体が大阪府内の任意団体 カスパルによって行われた可能性が高いとされる。Wikipedia の記載によれば 2004 年初頭からいわゆるアダルトゲーム撲滅を主張するようになったとされる。問題は、この請願の文言自体、先に引用したものを含め、科学的に疑わしいばかりか、表現の自由以前の問題である
などと憲法含む諸法律との整合性を全く考えていないことである。
確かに、この種のものに内容上問題があり、不愉快なものが存在することは承知している。しかし、かといって表現の自由以前の問題と重要な人権を否定するのはいただけない。そういったことを認めれば、性の自己決定権という人権もまた風前の灯となる。自己の過去の姿勢に矛盾する請願を仲介した議員の姿勢はいかがかと思う。

